
雑誌 Software Design 2023年8月号:インタビュー 「人気の着せかえアプリ『ポケコロ』誕生秘話」 趙龍植・洪銀美【前編】
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2023年7月25日
第3回 人気の着せかえアプリ『ポケコロ』誕生秘話
今回はアバターの着せかえを楽しむ『ポケコロ』アプリの歴史を探る。2011年9月にリリースされ、ココネを代表するアプリへと成長した。どのような経緯で誕生し、初期版ではどのような課題があり、どう克服してきたのか。立ち上げ当時を知る趙龍植氏と、現在開発チームリーダーを務める洪銀美氏が誕生当時を振り返る。デザイナーの熱意が『ポケコロ』を生んだ
洪: 趙さんは『ポケコロ』の立ち上げメンバーで歴史を知っていますし、面倒見がいいので、みんなから「お父さん」って呼ばれています(笑)。当時はスマホでアバターやキャラクターを楽しむという感覚はまだ馴染みがなかったと思います。
趙: どうしたら楽しんでもらえるだろうかと検討を重ねました。途中で東日本大震災に伴って開発を一時中断することもありましたが、2011年9月には着せかえ機能とドナ(アプリ内通貨)を盛り込んでリリースしました。今はなくなりましたが、初期版ではミニゲームもいくつか搭載していました。
洪: iOS版の次にAndroid版を出すことになり、日本でのリリースのために韓国のココネにいた私が日本の開発に加わりました。韓国ではスマホの約9割がAndroidでしたので、韓国で『ポケコロ』をリリースするにはAndroid版から開発しなくてはなりません。まずは韓国でAndroid版を開発して、日本向けに移植する形にしました。Android版は当初Javaで開発していたのですが、すごく重くてリリース前に断念しました。結果的には、C++で作ったものをサーバから呼び出すようにしました。
趙: iOSはiPhoneしかないのでデザイナーさんの思いどおりの色が出せるのですが、Androidは機種がたくさんあるので苦労したんですよね。
洪: 同じアイテムなのに、ある機種では「なんでこんな赤いの?」とか、色の表現に違いが出ることがありました。
洪: たとえばワンピースの上にアウターを着せたい、マフラーを重ねたい、髪色を抽出して別のアイテムの色を変えたい、アバターやキラキラの動きを繊細になめらかにしたいなど、リクエストは多岐にわたります。
趙: デザイナーさんのリクエストに応えるために、レイヤをどんどん増やしていきました。今では表のレイヤが12層あり、さらに入れ子構造でその中に数十個のレイヤを持っています。初期のころはスマホのスペックが低く、レイヤを増やすと動きが重くなるので苦戦しました。また、通信回線も3Gで遅かったので、データ量を抑える必要がありました。しかしアイテムのデータサイズを下げると、表現のクオリティを落としてしまいかねません。
洪: 『ポケコロ』の魅力に直結するのがアイテムの豊富さとリッチな表現なので、データは増えてしまいがちです。膨大なアイテムを全部ダウンロードすると数GBにもなります。最初はアプリの起動に必要なアイテムだけダウンロードしておいて、残りはあとから徐々にダウンロードするように工夫しています。

人気に火がついたのはガチャを導入してから
洪: 勢いがつき始めたのがガチャを導入してからですね。
趙: 1日の売上が100万を超えたタイミングで、展望が明るく開けてきた気がします。まだ黒字ではありませんでしたけど。
立ち上げ当時のポケコロチームは全体でエンジニア12人だけでした。しかも、デザイナーさんのほとんどはアルバイトで、正社員ではありませんでした。今では約100名のメンバーで『ポケコロ』を開発しています。多くがデザイナーさんで、『ポケコロ』の「かわいい」を支えてくれています。
洪: 『ポケコロ』は自分のアバターのコーディネートをかわいいと愛でるだけではなく、友だちと見せ合うことも楽しみになります。友だちに「これかわいいね」と言ってもらえるとうれしいですよね。ときにはアイテムを交換して、コミュニケーションを楽しめるのが魅力となっています。私から見ると、女性だけではなく男性も楽しめるアプリです。
続きは後編で
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